武蔵小山駅から徒歩2分の歯医者「東海林歯科医院」の東海林です。
「歯が痛くないから、歯医者には行っていません」
「昔からむし歯はないから大丈夫」
患者さんとお話ししていると、こういう言葉を聞くことがあります。
たしかに、歯が痛くなければ「今は大丈夫」と思いますよね。むし歯になりにくい人だったら、歯医者の必要性も感じないでしょう。
仕事や家事、育児などで毎日忙しくしていると、痛くもないのにわざわざ時間を作って歯医者に行くのは大変です。
でも、歯科の立場からすると、実はここに大きな落とし穴があります。
「痛くない=歯や歯ぐきに問題がない」ではないからです。
むし歯や歯周病は、初期にはほとんど症状がないまま進むことがあります。
そして「痛い」と感じる頃には、すでに病気がかなり進行していることも少なくありません。
今回は、「痛くないうちに歯医者に行く」ことがなぜ大切なのかをお話しします。

目次
「痛くないから大丈夫」が危ない?むし歯は「痛くなってから」では遅い
むし歯というと、下記のようなイメージがあると思います。
「歯がズキズキする」
「冷たいものがしみる」
「甘いものを食べると痛い」…など
もちろん、こうした症状はむし歯のサインのひとつです。
ただ、むし歯ができたらすぐに痛くなるわけでもなく、初期の場合は、本人にはほとんど自覚症状がありません。
歯の表面から少しずつ進行して、象牙質や歯の神経に近づいていくにつれて、冷たいものがしみたり、痛みが出たりするようになります。
さらに進行して神経まで炎症が及ぶと、強い痛みにつながることがあります。
WHOも、むし歯は初期には症状が目立たない一方、進行すると痛みや感染、最終的には歯を失うことにつながるとしています。
つまり、「今、痛くないから大丈夫」ではなく、「まだ痛みが出ていないだけ」というケースもあるのです。

歯周病が怖いのは、「痛くないまま進む」こと
「むし歯は痛くなったら行けばいい」と考えている方でも、歯周病については少し意外に感じるかもしれません。
歯周病は、むし歯以上に「痛みがないまま進みやすい病気」です。
- 歯ぐきから血が出る
- 歯ぐきが腫れる
- 口臭が気になる…など
こうした変化があっても、「歯磨きすると血が出るけど、そんなに問題でもないだろう」と放ってしまう方もいらっしゃるかと思います。
しかし、歯周病が進行すると、歯を支えている歯ぐきや歯槽骨などの組織が少しずつ破壊されていきます。
怖いのは、本人がその変化に気づきにくいことです。
厚生労働省も、むし歯や歯周病は「静かな病気」で、自覚症状が出たときにはすでに進行しているケースが多いと説明しています。
歯周病がさらに進むと、このような症状が出てくることがあります。
- 歯が浮いた感じがする
- 歯が動く
- 噛みにくい…など
でも、そこまで進行してしまうと、単純に歯ぐきをきれいにするだけでは済まない場合が多いです。だからこそ、症状がない段階で状態を確認しておくことが大切です。

「歯医者=痛い治療」はもう古い?
歯科治療では、病気が早い段階で見つかるほど、選択肢が多くなります。
たとえば小さなむし歯であれば、経過を見ながら予防を強化したり、必要に応じて小さな処置で済ませられたりする可能性が高いです。
一方、むし歯が大きくなって神経まで感染してしまうと根管治療が必要になることがあります。
さらに歯の大部分が失われてしまえば、被せ物や場合によっては抜歯など、治療の規模も大きくなってしまいます。
これは歯周病も同じです。骨は一度溶けてしまったら元には戻りません。
早い段階で歯ぐきの状態を確認し、プラークや歯石の付着状況、歯周ポケットなどをチェックしておけば、生活習慣やセルフケアを見直すきっかけになります。
「痛くなってから治す」よりも、「悪くなる前に見つけて、悪化させない」という考え方が、現在の歯科ではとても大切です。
実際、定期的に歯科を受診する人ほど、長期的にみてむし歯の経験が少なく、失う歯が少なく、口腔関連のQOLも良好だったという縦断研究の系統的レビューがあります。
歯医者に行くのは「治療」ではなくてもいい
「歯医者=歯を削る場所」というイメージを持っている方もいると思います。
でも、痛みがないときの歯科受診は、治療だけが目的ではありません。歯科医院では、自分では確認しにくいところまでチェックします。
- むし歯がないか
- 歯ぐきに炎症がないか
- 歯周ポケットの状態
- 歯石やプラークの付着状況
- 詰め物や被せ物に問題がないか
- 噛み合わせに変化がないか
- 歯が欠けたりすり減ったりしていないか
- 口腔粘膜に異常がないか…など
歯周病検診でも、歯肉出血、歯周ポケット、歯石、歯列・咬合、顎関節、口腔粘膜など、口の中を幅広く確認します。
つまり歯科医院は、「痛くなった歯を治す場所」だけではなく、「今の状態を確認して、これから歯を守る場所」でもあるのです。

どのくらいの頻度で歯医者に行けばいいの?
「歯医者は半年に1回行けばいいんですよね?」とよく聞かれますが、実は「全員が必ず半年に1回」というほど単純な話ではありません。
むし歯や歯周病のリスクは、人によって違います。
年齢、これまでのむし歯の経験、歯周病の状態、セルフケア、食生活、喫煙の有無などによっても変わります。
そのため、現在のエビデンスでは、すべての人に一律の受診間隔を設定するより、個人のリスクに応じて受診間隔を決める考え方が支持されています。
大切なのは、「半年に1回じゃないとダメ」ではなく、「自分に必要な間隔で、症状がない時にも確認する」ということです。
歯科医院で「自分の場合はどのくらいの間隔でチェックすることが必要か」相談してみてくださいね。

「歯みがきしているから大丈夫」でもない
毎日ちゃんと歯みがきするのはとても大切なことです。
でも、どんなに頑張って歯みがきをしていても、自分では見つけにくい場所や磨きにくい場所があります。
歯と歯の間、奥歯の溝、歯ぐきとの境目などは、特にプラークが残りやすい場所です。
また、自分では「きれいに磨けている」と思っていても、実際には磨き残しがあることも珍しくありません。
歯科医院でチェックしてもらうと、「ここに磨き残しが多いですよ」「この部分は歯ブラシの当て方を変えてみましょう」と、自分では気づかなかったクセを教えてもらうことができます。
定期的な受診は、歯をきれいにしてもらうだけではなく、毎日のセルフケアをより自分に合ったものにしていくための機会でもあります。
また、歯科疾患がすべて歯ブラシのみで賄えるわけでもないので、予防するためには何が必要か聞いてみてくださいね。
「痛くないから行かない」から「痛くない今こそ行く」へ
本当に大切なのは、痛みが出る前に、自分の歯の状態を知っておくこと。
むし歯も歯周病も、早い段階では症状がほとんどないです。そして、症状が出てから受診すると、すでに治療が必要な状態になってしまっていることも…。
だからこそ、「最近、歯医者に行っていないな」と思ったら、痛みがなくても一度チェックしてみてください。
何も問題がなければ、それはそれで安心できます。もし小さな変化が見つかっても、早い段階ならできることがあります。
歯は、一度失ってしまうと自然に元に戻ることはありません。「痛くなってから守るのではなく、痛くないうちから守る」。これが、将来も自分の歯で食事を楽しむためにできる、とても大切な習慣です。
「痛くないからこそ確認しておこう」と、そんなふうに歯医者との付き合い方を少し変えてみてはいかがでしょうか。
