顎関節症・噛み合わせ治療
「口を大きく開けると、カクッと音がして痛む」
「硬いものを食べると、顎の付け根が疲れてしまう」
これらは顎関節症の典型的な症状です。
しかし、顎関節症が引き起こす問題は顎そのものの不調だけに留まりません。
「どこの病院で診てもらっても、原因がはっきりしない」
「長年治らないものだと諦めている、慢性的な頭痛や肩こりがある」
「めまいや耳鳴り、手足のしびれといった、原因不明の不調に悩まされている」
もし皆様がこのような「不定愁訴」と呼ばれる、はっきりとした理由のわからない身体の不調を抱えているとしたら、その答えはご自身が思ってもみない場所、すなわち「歯の噛み合わせ」にあるかもしれません。
顎の関節は全身のバランスを司る頭蓋骨を支え、身体の中心軸である背骨へと繋がる極めて重要な場所に位置しています。
この顎の位置が噛み合わせの不調和によって、本来あるべき場所からわずかでもずれてしまうと、その歪みはドミノ倒しのように全身へと波及し、様々な不調を引き起こす引き金となるのです。
私たち東海林歯科はこの武蔵小山の地で約100年にわたり、単に歯を一本一本治すだけでなく、お口全体の「噛み合わせ」がいかに全身の健康と密接に関わっているかという視点を常に持ち続けてまいりました。
特に顎関節症とそれに伴う全身の不調に対する治療には、20年以上にわたって真摯に向き合い、専門性の高いアプローチを追求し続けています。
このページでは顎関節症とはどのような病気なのか、そして、その苦しみから皆様を解放するための当院の科学的根拠に基づいた治療法について詳しくお話しさせていただきます。
顎関節症とは
顎関節症は顎の関節とその周辺の筋肉(咀嚼筋)に問題が生じることで起こる、様々な症状の総称です。
顎関節症の3大症状
顎関節症を疑う代表的な症状は以下の3つです。
顎の痛み(関節痛・筋肉痛)
口を開け閉めする時や食事をする時に、耳の前あたりにある顎の関節や、頬、こめかみの筋肉が痛みます。
口が開きにくい(開口障害)
正常な状態ではご自身の指を縦にして3本分(約4〜5cm)ほど口が開きますが、指が2本程度、あるいはそれ以下しか入らなくなります。
無理に開けようとすると強い痛みを伴います。
顎を動かすと音が鳴る(関節雑音)
口を開け閉めする際に「カクカク」「コキッ」といったクリック音や、「ジャリジャリ」「ミシミシ」といった砂をこするような音が鳴ります。
顎の歪みが引き起こす「不定愁訴」
顎関節の不調は顎周辺だけの問題には収まりません。
顎の位置がずれることで頭の位置が傾き、そのバランスを取ろうとして、首や肩、背骨、骨盤へと全身の骨格に歪みの連鎖が生じます。
その結果、様々な専門科で診察を受けてもなかなか原因が特定できない、多種多様な「不定愁訴」として現れることが決して少なくないのです。
もし以下の症状に長期間悩まされているとしたら、その根本原因はお口の中にあるのかもしれません。
顎関節の歪みに関連する可能性のある全身症状
| 症状分類 | 具体的な症状 |
|---|---|
| 整形外科系の症状 | 慢性的な肩こり、首筋のこり、偏頭痛、腰痛、背中の痛み、手足のしびれ、関節痛、四十肩・五十肩、猫背、顔の左右の歪み |
| 耳鼻咽喉科系の症状 | 耳鳴り、難聴、めまい、慢性的な鼻炎、鼻づまり、のどの異物感・閉塞感 |
| 眼科系の症状 | 目の疲れ(眼精疲労)、目のかすみ、ドライアイ、視力の低下 |
| 内科・循環器系の症状 | 自律神経失調症、低血圧・高血圧、不整脈、手足の冷え、慢性的な疲労感・倦怠感、風邪をひきやすい |
| 消化器系の症状 | 食欲不振、胃腸障害、便秘、下痢 |
| 精神科系の症状 | 不眠症、気分の落ち込み、情緒不安定、集中力の低下 |
顎関節症の複雑な原因
顎関節症は単一の原因で発症することは稀です。
いくつかの要因が、コップに水が注がれるように少しずつ積み重なり、その人の持つ「許容量」を超えた時に様々な症状として溢れ出してくると考えられています。
根本にある「噛み合わせの不調和」
顎の位置を決定づけているのは上下の歯が噛み合う位置です。
この噛み合わせにほんのわずかでも不調和があると、顎は常に不安定な位置に置かれ、関節や筋肉に過剰な負担がかかり続けます。
- 不適合な詰め物・被せ物:高さや形が合っていない修復物が一箇所あるだけで、全体のバランスが崩れます
- 歯並びの乱れ(不正咬合):矯正歯科のページでも触れたように、乱れた歯並びは顎を不自然な位置へと誘導します
- 歯の喪失:抜けた歯を放置することで、周囲の歯が移動し、噛み合わせの高さやバランスが崩壊します
症状を悪化させる「生活習慣(パラファンクション)」
パラファンクションとは食事や会話といった本来の目的以外で、無意識に行われる口腔習癖のことです。
これらは噛み合わせの不調和によって生じた負担をさらに増大させる大きな要因となります。
- 歯ぎしり・食いしばり(ブラキシズム):顎関節症を引き起こす最大の増悪因子です
- TCH(歯列接触癖):日中の持続的な歯の接触が、筋肉を常に緊張させ疲弊させます
- 態癖(たいへき):頬杖をつく、うつ伏せで寝る、猫背、いつも同じ側ばかりで噛む、といった日常の何気ない癖が顎の位置を少しずつずらしていきます
心因的な要因「ストレス」
精神的なストレスは脳を介して、顎周りの筋肉を無意識に緊張させます。
この筋肉の緊張が睡眠中の歯ぎしりや日中の食いしばりを誘発し、顎関節への負担を増大させることが分かっています。
顎関節症の治療方法
原因となる習慣の改善
食いしばりや歯ぎしりなど、顎や歯に過度な負担を与える癖がある場合は、その原因を見極め、生活習慣の見直しから始めます。無意識のうちに力を入れてしまうケースも多いため、リラックスできる環境づくりや姿勢の改善なども効果的です。
薬による痛みのコントロール
痛みや炎症が強い場合は、鎮痛薬や抗炎症薬を用いて症状を緩和します。筋肉のこわばりを和らげる薬を併用することで、顎の動きをスムーズにすることもあります。あくまで一時的な緩和が目的であり、根本治療と併せて行うのが基本です。
理学療法による改善
マッサージやストレッチを通して、顎周囲の筋肉の柔軟性を取り戻します。
- 開口訓練:痛みのない範囲で少しずつ口を開く練習を行い、開口障害の改善を目指します。
- 徒手整復:歯科医師が手技で関節円板のずれを元の位置に戻す処置です。
- 低周波治療:マイオモニターと呼ばれる医療機器で筋肉に微弱な電気刺激を与え、緊張をほぐします。
このほかにも、冷却によって熱を持った筋肉を鎮めたり、温熱療法で血行を促進したりする方法が用いられることもあります。
スプリント療法(マウスピース治療)
透明なレジン製のスプリントという装置を装着し、食いしばりや歯ぎしりによる関節・筋肉への負担を軽減します。就寝時や顎に力が入りやすいときに使用することで、顎関節の安定と痛みの緩和が期待できます。
関節内注射による治療
顎関節の内部に生理食塩水を注入し、炎症性物質や血液などを洗い流して環境を整えます。必要に応じて、ヒアルロン酸製剤を注入して関節の滑りを改善することもあります。この処置は外科手術に比べて負担が少なく、症状の軽減に効果的です。
外科的治療
保存的治療で改善が見られない場合、関節円板を正常な位置に戻す外科的手術を検討します。内視鏡を使って行うケースもあり、侵襲を抑えた手術が可能です。ただし、これはあくまでも最終的な選択肢として行われます。
その不調、諦める前に一度ご相談ください
噛み合わせは皆様の健康状態を映し出す「鏡」であり、その健康を指し示す「羅針盤」のようなものです。
もしあなたがどこへ行っても解決しなかった長年の身体の不調に、今もなお悩み続けているとしたら。
もしあなたが「もう治らない」と諦めかけているとしたら。
その不調の根本原因はこれまで誰も注目してこなかった、お口の中のほんのわずかな噛み合わせのズレにあるのかもしれません。
私たち東海林歯科は武蔵小山の地で約100年にわたり、単に痛い歯を治すだけでなく、お口を通して皆様の全身の健康に貢献することを目指し歩んでまいりました。
私たちの専門的なアプローチが、皆様の苦しみを和らげ新たな希望となる可能性があると信じています。
どうぞ一人で悩まず、まずはそのお話をお聞かせください。
私たちがその長いトンネルの出口を見つけるお手伝いをします。
