武蔵小山駅から徒歩2分の歯医者「東海林歯科医院」の東海林です。
「インプラントって、結局どこまでが人工なんですか?」
患者さんから、こんな質問を受けることがあります。
インプラントというと、“人工の歯を入れる治療”というイメージを持たれている方が多いと思います。もちろんそれは間違いではありません。
ただ実際には、インプラントは1本の人工歯だけでできているわけではなく、いくつかのパーツが組み合わさって機能しています。
見えている“歯”の部分だけでなく、骨の中にも大切な構造があるんですね。

そして、この構造を知っておくことは、インプラントを長く使うためのメインテナンスにも関わってきます。
今回は、患者さんにもよく聞かれる「インプラントの構造」について、できるだけわかりやすくお話ししていきます。
目次
インプラントは“1本の歯”ではなく、3つのパーツでできている
一般的なインプラントは、主に次の3つのパーツで構成されています。
・上部構造
・アバットメント
・フィクスチャー

患者さんに模型を見てもらいながら説明すると、「えっ、こんなふうに分かれているんですね!」と驚かれることもあります。
実際、普段見えているのは“歯”の部分だけなので、骨の中にもパーツが入っていることを知らなかったのかもしれませんね。
それぞれのパーツには役割があり、どれかひとつだけではインプラントとして成り立たないのです。
見えている“歯”の部分 「上部構造」とは?
上部構造とは、口の中で実際に見えている「歯」の部分です。患者さんが「インプラントの歯」と認識しているのは、ほとんどがこの部分ですね。
天然歯に近い見た目を再現するため、セラミックやジルコニアなどが使われることが多くなっています。
特に前歯では、「自然に見えますか?」「周りから分かりませんか?」と気にされる方も多いです。
最近では見た目もかなり自然に仕上がるケースが増えてきました。ただ、見た目だけでなく“磨きやすさ”もとても大切です。
実際のメインテナンスでは、「歯間ブラシが通しづらい」「奥が磨きにくい」「舌側は磨くと苦しい」と感じる患者さんもいらっしゃいます。
特にインプラントは、自分ではしっかり磨いているつもりでも、歯間部や骨に埋まっている部分との境目に汚れが残ってしまうことがあります。天然の歯とは違う形態をしているからですね。つまり、天然歯よりもより注意深く磨く必要があるということです。
インプラントを長持ちさせるためには、見た目の美しさだけでなく、毎日きちんと清掃できることも重要なのです。

歯と骨をつなぐ“つなぎ役” 「アバットメント」とは?
アバットメントとは、骨の中に埋め込まれた部分と、見えている歯の部分をつなぐパーツです。
いわば“土台”や“連結部分”のような役割をしています。
患者さんからは見えにくい部分ですが、インプラントを安定して機能させるためにとても重要です。
材質はチタン製が一般的ですが、前歯など見た目が重視される部位では、白いジルコニア製が使われることもあります。
また、歯の固定方法には、
・ネジで固定するタイプ
・セメントで固定するタイプ
があります。
それぞれ特徴がありますが、どちらの場合も「見えない部分を清潔に保つこと」が大切になります。
実際、歯ぐきの炎症がなかなか改善しないケースでは、見えない部分に汚れが溜まっていた、ということもあります。
患者さんから見えない部分だからこそ、定期的なチェックが重要なんですね。
骨の中に入る“人工歯根” 「フィクスチャー」とは?
フィクスチャーとは、顎の骨の中に埋め込まれる部分です。
患者さんから「ネジみたいなものですか?」と聞かれることがありますが、イメージとしては近いかもしれません。
この部分が、いわゆる“人工歯根”になります。
多くはチタン製で、骨と結合しやすい特徴があります。
この骨と結合する現象を、「オッセオインテグレーション」と呼びます。
少し難しい言葉ですが、インプラントをしっかり支えるためにとても重要な仕組みです。
フィクスチャーには長さや太さなどいろいろな種類があり、骨の状態や部位によって選択されます。
ただし、しっかり埋入されていても、その後のお手入れが不十分だと「インプラント周囲炎」を起こすことがあります。
これは、インプラントの周囲に炎症が起こる病気です。
患者さんのなかには、「インプラントは虫歯にならないから安心」と思われている方もいます。
たしかにインプラント自体はむし歯にはなりません。しかし、汚れが残った状態が続けば、歯ぐきに炎症が起こる可能性があります。
しかも、天然歯と違って、症状に気づきにくいケースもあるため注意が必要です。
インプラントを長持ちさせるために大切なこと
インプラントは、治療が終わったらそれで終わりではありません。むしろ、その後のセルフケアや定期的なメインテナンスがとても重要になります。

実際のメインテナンスでは、
・ブラッシング状態
・歯ぐきの状態
・噛み合わせ
・骨の状態
などを確認しています。
ただ、患者さんによって磨きやすさや生活習慣は違います。患者さんのお口の中の状態によっては無理やり歯の形態を作ることもあるので、磨きづらい形になっているケースも多々あります。
そのため、「どんな清掃方法なら続けやすいか」を一緒に考えていくことも大切です。
インプラントを長く快適に使うためには、患者さん自身が構造を理解し、毎日のケアに関心を持つことも大きなポイントになるのではないでしょうか。

まとめ
インプラントは、
・上部構造
・アバットメント
・フィクスチャー
という3つのパーツによって構成されています。
普段見えているのは“歯”の部分だけですが、実際には骨の中にも大切な構造があります。
また、インプラントを長持ちさせるためには、治療後のセルフケアやメインテナンスも欠かせません。
「どんな構造になっているのか」を知ることで、毎日のケアへの意識も変わってくるかもしれませんね。
参考文献
1)公益社団法人 日本口腔インプラント学会:口腔インプラント治療指針2024
2)日本口腔インプラント学会編:口腔インプラント学,第6版,医歯薬出版,2020
3)Brånemark PI, et al. Osseointegrated implants in the treatment of the edentulous jaw. Scand J Plast Reconstr Surg Suppl. 1977.
4)ITI Treatment Guide Volume 1. Quintessence Publishing.
