バイオフィルムって何?歯の健康を守るために知っておきたい基礎知識

歯を指さす女性

武蔵小山駅から徒歩2分の歯医者「東海林歯科医院」の東海林です

「毎日歯を磨いているのに、虫歯や歯周病になってしまう」

そんな経験をしたことはありませんか?実はその原因のひとつに、「バイオフィルム」という“目に見えない細菌の膜”が関係しています。

バイオフィルムという言葉は聞き慣れない方も多いのではないかと思います。まだ認知度は低いですが、実はお口のトラブルを引き起こす元凶ともいわれているものです。

この記事では、バイオフィルムの正体や、放っておくとどうなるのか、また除去・予防のための方法についてわかりやすく解説します。

バイオフィルムとは?

まずはバイオフィルムとはどういうものなのか解説していきます。

バイオフィルムの正体

バイオフィルムとは、細菌が歯の表面に集まって、外からの刺激や薬の影響を受けにくくするために作り出す、ぬるぬるした膜のことです。台所の排水口や浴槽にできた“ぬめり”を見たり触れたりしたことはありませんか?その“ぬめり”と似た構造が、歯の表面で起きているものがバイオフィルムです。

バイオフィルムの膜の中では、さまざまな種類の細菌が集まり、互いに助け合いながら繁殖しています。外側の膜がバリアとなり、うがい薬や抗菌剤が届きにくくなるという厄介な特徴があります。

プラーク(歯垢)との違い

歯の汚れというと「歯垢(プラーク)」が思い浮かぶ方が多いでしょう。

この歯垢が成熟して強固な膜状になったものが、バイオフィルムです。

歯垢は、歯磨きでも比較的落としやすいですが、放置すると数日でバイオフィルム化して強固な細菌の集まりになります。

こうなると通常のブラッシングだけでは完全に落としきれず、歯科医院での専門的なケアが必要になります。

バイオフィルムが歯や歯ぐきに与える影響

バイオフィルムを放置すると、虫歯や歯周病の原因になったり、セルフケアがしづらい状態になったりします。

虫歯の原因になる

バイオフィルムの中には、たくさんの細菌が存在しており、その中には虫歯菌(ミュータンス菌など)も多く存在します。

虫歯菌は食べ物に含まれる糖分を分解して酸を作り出し、歯の表面(エナメル質)を溶かしていきます。

バイオフィルム化した虫歯菌は、強固に付着しているため、簡単に除去することができない状態になっています。

歯周病を悪化させる

歯と歯ぐきの境目に付着したバイオフィルムは、歯周病の原因にもなります。

歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)のバイオフィルムには、歯周病菌が多く存在します。歯周病菌は、毒素を出して、歯ぐきに炎症を起こしたり、歯を支える骨を溶かしたりします。

歯と歯ぐきの間の溝に入り込んだバイオフィルムを、自宅での歯磨きだけでは除去するのはとても難しいです。

薬やうがい薬が効きにくい

バイオフィルムの膜は、抗菌剤や薬の成分が中まで届くのを防いでしまいます。

そのため、どんなに殺菌作用のあるうがい薬を使っても、その作用が届きません。

物理的に除去する必要があるのですが、自宅での歯磨きでは簡単には除去できません

この膜によって守られた環境は、バイオフィルムの厄介な特徴といえます。

バイオフィルムができる場所と時間

歯の模型を持つ女性

では、バイオフィルムがどこでどのように作られていくのか解説していきます。

どのくらいでできる?

歯をしっかり磨いた直後でも、数時間後には再び細菌が付着し始めます。

そして24〜48時間ほどでバイオフィルムが形成され、強固な構造になります。

つまり、2日間ほど歯を磨かないだけで、お口の中ではバイオフィルムがこびりついてしまうということです。

それは、「磨き残し」でも言えることです。自分では歯を磨いているつもりでも、磨けていない場所がずっとあると、あっという間にバイオフィルムは形成されてしまいます。

バイオフィルムができやすい場所

バイオフィルムは、口の中のあらゆる場所にできますが、特に磨きにくい・汚れが残りやすい部位にできやすい傾向があります。

たとえば、次のような場所は要注意です。

歯と歯の間

歯ブラシの毛先が届きにくく、プラークがたまりやすい部分です。

デンタルフロスや歯間ブラシを使わないと、バイオフィルムがすぐに形成されてしまいます。

歯と歯ぐきの境目

歯ブラシがしっかり境目に当たっていないと、汚れが残ってしまい、歯周病の原因となります。

奥歯の噛む面

奥歯の噛む面は、デコボコとしていて、細かい溝がたくさんあります。食べかすや細菌が溜まりやすく、特に磨き残しが起こりやすい場所です。

詰め物・被せ物の境目

わずかな段差に汚れが溜まりやすく、そこから細菌が定着します。

自分では見えにくい部分なので、定期的なチェックが大切です。

歯だけじゃない!舌や入れ歯にも

バイオフィルムは歯の表面だけでなく、舌の表面入れ歯などにも形成されます。

これらは「舌苔(ぜったい)」や「入れ歯のぬめり」として現れ、口臭の原因にもなります。普段の清掃に舌清掃を加えることと、入れ歯がある方は歯を同じように入れ歯も毎日清掃することが大切です。

バイオフィルムを除去するための方法

バイオフィルムを除去するのには、自宅で行うケアと歯科医院で行うケアの両方が大切です。

自宅でできるケア

デンタルケア用品

バイオフィルムを作らせないためには、毎日のセルフケアが基本です。

毎日、食後に丁寧な歯磨きを行うように心がけましょう。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシも活用するのがおすすめです。

磨き残しが続くと、再び膜が形成されてしまいますので、歯科医院で自分に合った歯磨き方法の指導を受けると安心です。

歯科医院でのプロフェッショナルケア

歯科医院では、専用の器具を使って、歯面にこびりついたバイオフィルムを徹底的に除去します。

このようなクリーニングをPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)とよびます。PMTCを行うことで、歯ブラシでは届かない場所の汚れまで徹底して除去することができます。また、仕上げに歯の表面をなめらかに磨くことで、汚れの再付着も防げます。

歯科医院での定期メンテナンスが大切

歯科医院でのブラッシング指導の様子

ここまで、バイオフィルムについて解説してきましたが、バイオフィルムをしっかり除去し、虫歯や歯周病から歯を守るためには、歯科医院での定期メンテナンスが非常に重要になります。

プロの手でしか落とせない汚れがある

バイオフィルムは、自宅でのケアだけでは完全に除去できません。

もちろん毎日の自宅でのケアは大切ですが、歯科医院での専門的なクリーニングによって、はじめてリセットできます。

定期的にメンテナンスを受けることで、虫歯や歯周病のリスクを大幅に減らせます。

定期検診で早期発見・予防を

バイオフィルムが関わるトラブルは、早期に発見すれば軽い処置で済むことがほとんどです。早めにトラブルを見つけて、早めに治療をするようにしましょう。

定期検診では、歯ぐきの状態や磨き残しのチェックも行われるため、日々のケアの見直しにも役立ちます。

まとめ

バイオフィルムは、見た目ではわからないけれど、虫歯や歯周病の原因となる厄介な存在です。

毎日の歯磨きと、定期的なプロのケアを組み合わせることで、清潔な口内環境を保つことができます。

「最近、歯ぐきが腫れやすい」「口臭が気になる」などの症状がある方は、バイオフィルムが関係しているかもしれません。

痛みなどがなくても、お口のケアは重要です。気づいたときに早めにケアすることが、健康な歯を守る一番の近道になりますので、早めに歯科医院を受診し、出来たら定期的にケアをしてもらうようにするのが良いでしょう