親知らず

「親知らずが生えてきたけれど、抜いたほうがいいのだろうか」
「抜歯は、とても痛くて顔が腫れると聞いて、怖い」
「以前、親知らずが痛んだが、いつの間にか治まったので放置してしまっている」
お口の一番奥に生えてくる「親知らず」は、その名前とは裏腹に多くの方にとって、痛みや腫れ、そして抜歯への恐怖といった悩みの種となっているのが実情です。
しかし、まず知っていただきたいのは親知らずは、必ずしもすべての人が抜かなければならないわけではないということです。
大切なのは、レントゲン撮影などによる正確な検査でご自身の親知らずが今どのような状態にあり、将来どのような影響を及ぼす可能性があるのかを正しく知ることです。
東海林歯科では精密な検査と丁寧なカウンセリングを通して、患者様お一人おひとりにとって最善の選択肢を一緒に考えていくことを何よりも大切にしています。 そして、もし抜歯が必要であると判断した場合には当院が持つ医療機器と技術、そして経験を活かし、安全性と快適性を徹底的に追求した処置を行うことをお約束します。
このページでは親知らずに関する皆様の疑問や不安を解消するために、その正体から抜歯の必要性、そして当院の安全な治療への取り組みについて詳しくお話しさせていただきます。

親知らずとは

「親知らず」とは通称で、正式な歯科用語では「第三大臼歯（だいさんだいきゅうし）」、あるいは「智歯（ちし）」と呼ばれます。

親知らずの基礎知識

なぜ親知らずは問題を起こしやすいのか

他の歯と同じ永久歯であるにもかかわらず、なぜ親知らずだけがこれほど多くのトラブルの原因となるのでしょうか。
その理由は「生えてくるためのスペース不足」にあります。
現代人は食生活の変化などから、昔の人に比べて顎の骨が小さくなる傾向にあります。
そのため歯列の後に残されたわずかなスペースに、大きな親知らずが無理やり生えようとすることで様々な問題が引き起こされるのです。

親知らずの様々な生え方（萌出異常）

十分なスペースがない場合、親知らずは正常な位置に生えることができず以下のような異常な生え方をすることがあります。

傾斜埋伏・水平埋伏

親知らずが斜めや真横を向いて、手前の健康な歯（第二大臼歯）の根元に食い込むように埋まっている状態です。

垂直埋伏

歯の向きはまっすぐですが、骨や歯茎の中に完全に埋まったまま外に出てこられない状態です。

不完全萌出（半埋伏）

歯の一部だけが歯茎から中途半端に顔を出している状態です。
歯と歯茎の間に深い溝ができ、そこに食べかすや細菌が溜まりやすくなるため炎症（智歯周囲炎）を起こしやすい状態と言えます。

抜くべき親知らず、抜かなくてもよい親知らず

「親知らず＝抜くもの」というイメージをお持ちかもしれませんが、それは必ずしも正しくありません。
歯科医師は親知らずがお口全体に及ぼす影響を総合的に評価し、抜歯するかどうかの判断を下します。

抜歯をお勧めする場合

以下のようなケースでは現在症状がなくても、将来的に高い確率で問題を引き起こす可能性があるため計画的な抜歯をお勧めすることがあります。

1.親知らず自身が虫歯になっている

一番奥にあり頬の肉も邪魔をするため、親知らずの歯磨きは非常に困難です。
一度虫歯になってしまうと器具が届きにくく、満足な治療ができないことが多いため抜歯が第一選択となります。

2.隣の健康な歯を虫歯や歯周病にするリスクが高い

これが親知らずを抜く理由の一つです。
斜めに生えた親知らずとその手前の第二大臼歯との間には、清掃が極めて困難な隙間ができます。
そこに汚れが溜まり続けることで何の問題もなかったはずの、大切な第二大臼歯が気づかないうちに深刻な虫歯や歯周病に侵されてしまうのです。

3.歯茎の炎症（智歯周囲炎）を繰り返している

親知らずの周りの歯茎が、疲れやストレスで体の抵抗力が落ちた時などに赤く腫れて、強い痛みを伴うことがあります。
この「智歯周囲炎」を何度も繰り返している場合、根本的な原因である親知らずを抜くことが解決策となります。

4.歯並び全体に悪影響を及ぼす可能性がある

横向きに生えた親知らずが手前の歯を前へ前へと押し続けることで、時間をかけて前歯の歯並びが乱れてくる原因となることがあります。
また、矯正治療を行う際には歯を動かすためのスペースを確保するために、親知らずの抜歯が必要となることがほとんどです。

5.噛み合わせに問題を引き起こしている

上下どちらか一方の親知らずしか生えておらず、噛み合う相手の歯がない場合その親知らずは時間と共に対向の歯茎や頬の粘膜に向かって伸び出してきて、口内炎や顎の不調の原因となることがあります。

抜歯の必要がない、あるいは経過観察とする場合

• まっすぐに正常な位置に生えており、上下でしっかりと噛み合って一つの歯として機能している場合
• 歯磨きが問題なくできており、虫歯や歯周病のリスクが低い場合
• 骨の中に完全に埋まっており、レントゲン写真上も周囲の組織に悪影響を及ぼす兆候（嚢胞など）が見られない場合

東海林歯科の安全・安心な親知らず治療

親知らずの抜歯、特に下の顎に埋まっている親知らずの抜歯は歯科治療の中でも、患者様が強い不安や恐怖を感じる処置の一つです。
当院ではその不安な気持ちに寄り添い、「怖い」「痛い」をできる限り取り除くための万全の体制を整えています。

安全性の根幹をなす「歯科用CTによる精密診断」

親知らずの抜歯における安全性は、術前の診断の精度に懸かっていると言っても過言ではありません。
当院では特に下の親知らずの抜歯を行う際には、必ず歯科用CTによる三次元的な精密診断を行います。
下の顎の骨の中には「下顎管（かがくかん）」という、太い神経（下歯槽神経）と血管が通っている重要な管が存在します。
下の親知らずの根の先端はこの下顎管と非常に近い位置にあることが多く、抜歯の際にこの神経を傷つけてしまうと術後に唇や顎の皮膚の感覚が麻痺してしまうという、深刻な偶発症を引き起こすリスクがあります。
従来の二次元的なレントゲン写真では歯の根と神経が重なって見えるだけで、その正確な位置関係を把握することは困難でした。
しかし、歯科用CTを用いることで歯の根と神経の三次元的な位置関係を立体的に、そしてミリ単位で正確に把握することが可能になります。
神経と接触しているのか、あるいは離れているのか。
その距離はどのくらいか。
これを術前に知ることができるかどうかが、手術の安全性を決定的に左右するのです。
CTによる精密診断は親知らず抜歯におけるリスクを回避し、安全な手術計画を立てるための現代の歯科医療における絶対的な必須事項であると私たちは考えています。

抜歯への恐怖心が強い方へ「静脈内鎮静法」

どれだけ安全だと説明されても、「手術そのものがどうしても怖い」というお気持ちは当然のものです。
特に歯茎を切ったり骨を削ったりする必要がある難しい抜歯（難抜歯）の場合や、嘔吐反射が強くてお口の中に器具を入れるのが苦手な方、過去の歯科治療で強いトラウマをお持ちの方。
そのような患者様にはインプラント手術でも用いている「静脈内鎮静法」を応用した、リラックス麻酔下での抜歯が可能です。
点滴によって鎮静薬を投与することでまるでうたた寝をしているような、穏やかで心地よい状態になります。
意識が完全になくなるわけではありませんが不安や恐怖心はほとんど感じず、処置中の時間感覚もなくなるため「気づいたら、あっという間に終わっていた」という感覚で心身ともに大きな負担なく、抜歯の処置を終えることができます。

難症例における、医療機関との連携

CT診断の結果、親知らずが神経と完全に癒着しているなど当院での抜歯が極めて高いリスクを伴うと判断された場合や、重篤な全身疾患をお持ちで入院下での厳重な管理が必要であると判断された場合には、私たちは決して無理に院内で処置を行うことはありません。
連携する東京医療センターをはじめとする大学病院や総合病院の口腔外科へ、責任を持ってご紹介し患者様にとって安全な環境で治療を受けていただけるよう万全の体制を整えています。

親知らずの抜歯プロセスと、抜歯後の過ごし方

抜歯当日の流れ

1.確認と問診

体調などに変わりがないかを確認します。

2.麻酔

表面麻酔を塗布した後、できるだけ痛みが少なくなるようゆっくりと局所麻酔を行います。

3.抜歯処置

正常に生えている場合は比較的短時間で抜歯が完了します。埋まっている歯の場合は歯茎を切開し、必要に応じて歯をいくつかに分割したり周囲の骨を削ったりしながら、丁寧に歯を取り除きます。

4.洗浄・縫合

抜歯した部分をきれいに洗浄し、傷口を縫い合わせます。

5.止血確認と注意事項の説明

ガーゼをしっかりと噛んでいただき出血が止まっていることを確認した後、抜歯後の過ごし方について詳しくご説明します。

抜歯後に起こりうることと、重要な注意点

痛みと腫れ

抜歯後、麻酔が切れると痛みが出てきます。
処方された痛み止めを我慢せず早めに服用してください。
特に下の親知らずの抜歯後は2〜3日後をピークに頬が腫れることがありますが、1週間ほどで自然に引いていきますので心配はいりません。

うがい

強くうがいをすると傷口を塞いでいる血のかさぶた（血餅：けっぺい）が剥がれてしまい、骨が露出して激しい痛みを引き起こす「ドライソケット」の原因となります。
抜歯当日は強いぶくぶくうがいは避け、お口に水を含んでそっと吐き出す程度にしてください。

食事・生活

当日は飲酒、激しい運動、長時間の入浴など血行が良くなることは避けてください。
食事は麻酔が完全に覚めてから、刺激の少ない柔らかいものを抜歯した側とは反対の歯で噛むようにしてください。

問題が起きる前に計画的な対処を

親知らずは一度痛み出すと日常生活に支障をきたすほどの、強い苦痛を伴うことがあります。
私たちはそのような事態に陥る前に、計画的に対処することの重要性を繰り返しお伝えしています。

なぜ「痛くなる前」の抜歯が望ましいのか

急性炎症時の抜歯はできません

歯茎がひどく腫れて強い痛みがある「急性炎症」の状態では、麻酔が効きにくくまた抜歯によって感染を周囲に広げてしまうリスクがあるため、原則としてその日のうちに抜歯することはできません。
まずは抗生物質や消炎剤で炎症を鎮め症状が落ち着いてから、改めて抜歯を行うことになります。
結果として痛い思いをする期間が長引き、通院回数も増えてしまいます。

年齢が若いほど、回復が早い

一般的に年齢が若いほど骨が柔らかく、抜歯後の傷の治りも早いため術後の痛みや腫れといった身体への負担が少なく済む傾向にあります。

人生の重要な節目を見据えて

妊娠中はお薬の服用やレントゲン撮影に制限があるため、原則として親知らずの抜歯はできません。
妊娠中に親知らずが痛み出すと非常に困難な状況に陥ってしまいます。
また、海外留学や長期出張、大切な試験などすぐに歯科医院にかかれない状況が予測される場合には、将来的に問題を起こす可能性のある親知らずは余裕のある時期に、計画的に抜歯しておくことが賢明です。
当院の予防歯科（定期検診）ではお口全体のチェックの一環として、親知らずの状態も常に注意深く観察しています。
ご自身の親知らずについて少しでも気になること、不安なことがあればどうぞ一人で悩まず私たちにご相談ください。
CTによる精密な診断に基づき皆様にとって道筋を、一緒に見つけていきましょう。